廃園跡地

言いたい事を言いたいまま!

ばかもの


  ばかものを読破。ネタバレ有り。














  

  何だかわからないまま終わってしまった。海の仙人みたいだ。結局何が言いたかったのかわからなかった。でも面白かった。最初は読むのに苦労する程響くものがなかったのだけど。冒頭の性描写はねちょっと折れそうになって、もう閉じてもいいかな?とか思った。いや性描写より、不自然な大須君の事かもしれない。セックスしながら餃子とか幼虫とか考えてる時点でそんなに額子の事愛してない気がするの…。等身大の男性みたいに解説で言われてたけど、行為中そんなに注意力散漫なの?

  袋小路の男の小田切よりダメ人間の大須君。どうしてこうなってしまったんだろう。引っかかってた感情って何だったんだろう。それも明らかにならなかった。単にダメ人間同士がくっついて終わってしまったのだ。いやお互い克服したものがあるので、ダメ人間ではないのだけど。色々釈然としない部分がありスッキリしない。しかし男女の距離感は絶妙でもある。狭まれた交友関係はリアル。アンコール依存症の描写もリアルだ。酒が飲めなくて良かった。

ばかものって半端な物語に思える。だってアル中の話なのかラブストーリーなのか再生の物語なのか軸がハッキリ見えない。ごった煮でどれもぼけて見える。ラストはハッピーエンドっぽく閉めてるけど、2人は傷を舐めあってるようにも思えてしまうのだ。額子の本質は変わらないだろうし。それとも恋愛を超越して、絲山秋子っぽい男女の距離感になったのだろうか。それなら分かるかもしれないけど。2人が冒頭の様に愛し合ったり大切にし合っていても、もう傷の舐め合いにしか見えないのかもしれない。

  袋小路の男にしたって、日向子の深い愛情と言えば聞こえは良いが、単に同じ事を繰り返してしまうダラシナイ女である事は間違いない。或いは小田切に依存しているか。学習しない女なのか。だって現実、女はいつもリミットとの戦いだ。それを意識しない女だけが、過ちを何度も繰り返せる。実際それをしたら後悔しないではいられないと思う。だって人間老いていくんだもん。だから日向子は架空の人物か或いは、とても能天気かばかものなんだろう。まぁ本人の幸せは本人が決めるのだけど。しかしオンリートーク以外になかなか気になるモノに出会えない。


ばかもの (新潮文庫)

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