廃園跡地

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キャリー


  映画キャリーを観た。リメイクでなくて70年代、監督がデパルマ、主演がシシースペイセクのやつである。以下ネタバレあり。

















  ホラーらしいラストで面白かった。色んな要素が混じった映画である。単純に言えばいじめられっこのキャリーが復讐するわけだけど。この映画には色んなものが込められている。陰湿ないじめの問題、居場所のない家庭、でも救おうとしてくれる人たちもいる。一部青春モノっぽい部分もあって、とてもロマンチックで素敵な部分があるのだけど、やっぱりそれだけでは終わらない。どうなるか分かってるので、うわぁやめてくれって感じだ。

  冒頭のシャワーシーンから始まったキャリーの初潮。そこから物語が発展し、ストーリー上無駄なものがない一つないように思える。信心深く厳格なクリスチャンの母親。息の詰まる家庭。いじめ問題は勿論、子どもを満足に育てられない家庭には救いの手が必要だと思わさせられる映画。しかしそれはこの映画で招かれる悲劇のワンピースにすぎない。きっとこういう家庭が世界中にあるのだろう。悲しくなる。

  初潮を迎えたキャリーに放たれたのは母の酷い言葉であった。女は原罪がある為に毎月血を流さなければならないんだとさ。罪を持っているから生理が来るなんて、体の構造なのに。信心深いというより最早精神病である。そうこの母親は病んでいるのである。きっとこの母親も同じ様にして育てられたのであろう。

  青春映画っぽくロマンチックなシーンがある。最初パーマ頭の女の子が彼氏にキャリーを誘わせたのはいじめる目的であるかと思っていた。それがどうも本当にみんなに馴染ませる為の優しさだとのちにわかる。先生もとても良い人なのだけどこれが仇になってしまう。

  いじめっ子の女の子はナンシーアレンが演じているけど陰湿で悪い女である。高校生の癖に娼婦みたいな女である。70年代のアメリカのティーンエイジャーはみんなこんな早熟でdqnなんだろーか。とんでもねぇ時代である。dqnて一人じゃ何も出来ないのに偉そうなのはアメリカも同じか。しかし悪いなんてもんじゃない、一線を画してしまっている。

  青春映画っぽいロマンチックなシーンを挿入する事で後半の悲劇がより鮮烈にうつる。どうなるか分かっているのに悲しいったらない。しかしシシースペイセクの透明感が可愛い。でも怒ったキャリーの目力は半端なく恐ろしい。キャリーを救おうとしてくれた人たちも無差別に死んでしまい、奇しくも生き残ったパーマの子もまた悪夢にうなされる。しかしそれは、キャリーの仕業というよりは、彼女の心の中、良心の呵責ともとれる気がする。

  ホラー映画っぽく、一寸の隙もなく、容赦なく、いい人達だけが生き残る展開もない為寧ろ清々しい。物語的には後味が悪いものに分類されるんではなかろうか。あんな悪女のナンシーアレンがあんな簡単にくたばってしまうのはつまらなかったけど、あれ以上やったら、後味が悪いというより単にスッキリする映画になってしまう。後味の悪さの分配が絶妙だと思う。

  一難去って、最後に全てを清算させようとする展開。自分が産み出した悪魔を自分で殺そうとする母親。勿論返り討ちに遭うわけだけど。何故家が突然崩壊したのだろうか。それだけが…。悲しい物語であったけど、やっぱり復讐しても幸せにはなれないし、そういう意味合いでもキャリーは死ななければななかったんだろうか。あれだけの人数殺しておきながら、平然と帰ってきて抱きしめてってのもなかなか怖いわけだけど。

  キャリーへの感情移入は勿論、簡単なストーリー、骨組みの上に複雑な問題を絡ませて非常に面白かった。しかし、自分の年齢のせいかもしれないけど、キャリー以上にナンシーアレンの役柄は色々考えさせられる。美くしくても、人を何としても排除しよう、どんな手を使ってもという所で、醜い女だなと感じさせたし、人としてそういう生き方だけはしちゃいけないと感じた。そういう意味でも存在感がある悪役だった。

  ラストはちゃんとホラーとして消化されていて良かった。あの悪夢が起きていることがキャリーの呪いなのか、呪縛なのか、良心の呵責なのかわからないけど。続編やリメイクも観たい。