廃園跡地

言いたい事を言いたいまま!

今日の出来事と生き方


  乙一の暗い所で待ち合わせを読んだ。心がじんわりとした、不覚にも。乙一の作品をパラ見した時、こいつの作品は読めないと思ったけど、読んで良かったし、出会えて良かった。その位の作品だった。内容は警察に追われてる男が、視覚障害のある女性の家に潜む話で、これだけでも色々ワクワクさせられる。

  このストーリーには孤独があった。静かな孤独、静かな触れ合いと温かさ。そしてサスペンス。人との接触を拒絶してる2人が触れ合う事で、生まれる温かさと静かな関係。美しかった。美しい空気だった。繊細だった。あたしが思い悩んできた事へのちょっとした答えがあった気がした。人を拒絶して生きること、人と関わらずに生きることがどういうことかは分かっているのだけれど。この2人と同じことをたくさん考えてきたから、読んでいながら、孤独をしっかり味あわされて、何とも言えない気分になったり。でも2人の静かな関係の中にある優しさで、心が温まる。まるであたしも誰かに優しく出来る様な気がした。


  優しい人、純粋な人は強い。多分性質だとしても、苦しいこと嫌なことを体験して傷ついても、傷つけられても、優しさをやめないからだ。打算的に生きている人や、人を蹴落とす人は、弱い。裏切りや傷つけられるのを恐れてるからなのかな。あたしは弱い。傷つくのが嫌だから、人には近づかない。

  全く関係ないけど、昔、仲良くしてた子が言ってた台詞がある。人から貰った優しさを人に返せたら良いって。夢みたいな台詞だ。その子は、一時期金銭的な事で追い込まれて、大切だった友達を失った。その時見捨てないでいてくれた友達がいて、それが嬉しかったらしく、その気持ちを他の人にも与えたいと考える様になったらしい。だから誰も見捨てないと彼は言ってた。

  結果的にあたしが彼を見捨てた。見捨てた、というのもおかしな話ではあったけど、連絡を絶った。また不安定にならかけて、彼に縋って迷惑をかけたからだ。彼が助けてくれた素振りはなかった。その時のその台詞だって、今では嘘で単なる理想であることを知ってしまっているけれど、良いことではあると思う。

  人への感謝を忘れず、それを人にまた与えられたらどんなに良いか。そんなこと、この5年は考えたことなかった。既に他人との関係を絶とうとしてばかりいた。横暴な上司、人を信頼しない人間、最初は親切だけど、要求が強くなる人、好きだと言ってくれて近づいては来るけど、何も知らず、何も考えてない人、親切なフリをして、実はとても冷たい人。そして、横暴で人の事を考えないお客さん。色んな人を見てきた。その度にまた、落胆して傷ついた。案外。人が益々嫌いになってしまった。

  だけど、良くしてくれる人はいる。勿論、良くしてくれてた人が、冷たくなったり、傷つけてくることもあった。最近でも。あったけど、今は良くしてくれる人には、たくさん感謝してる。あたしの気持ちを明るくしてくれる人には。それを忘れちゃいけないなと思う。

  今日彼氏としゃぶしゃぶを食べに行った。その店は兎に角安価な割りに美味しい。ずっと行きたくて、今日行った。しゃぶしゃぶもさることながら、店員さんは皆優しくて、気がつく。細やかな心配りをしてくれる。食べ物が減ってもすぐ届けてくれるし、何か必要なものはないか声をかけてくれる。時間制限があるのに、空いてる時は声をかけてこない。すごく居心地が良くて、つい長居してお喋りが弾んでしまった。久しぶりに彼氏とデートした事も手伝って。

  この前この店で飲んだ時も楽しくさせて貰った。それは、皆で飲んだからだと思ってたけど、それだけじゃなかった。店員さんの細かい気配りがあったからだ。物凄く接客が良くて、接客でこんなに明るくて楽しくて癒される気持ちになったのは初めてだった。感謝の言葉を伝えたかったけど、恥ずかしくてご飯が美味しかったとしか伝えられなかった。チェーン店なので、全国でこのレベルなのだろうか。それともこのお店だけなのか。また来ようと思った。

  人から与えられた気持ち。今日接客で店員さん達から頂いた気持ちをあたしも大切にしないといけない。それを大切にして、人に与えないといけない。そしたら、皆が楽しい気持ちでいられる。嫌なことがたくさんあったり、楽しい気持ちをぶち壊す人間は世の中に兎に角多いし、だから他人が嫌いなんだけど、理想でも人にそうやって与えられたら良いと思う。それこそ与えてくれた人への感謝を忘れないってことなのかも知れない。あたしは臆病だ今でも。また傷つけられるのは嫌だ。だから人へ優しくするのはやめようとか、関わるのはやめようと思ってる。だけど、本を読んだことで、優しさや繊細さを少し取り戻せた気がする。あたしは完全にそれを忘れていた。自分だけが良ければ良い人間になっていた。それを変えてくれそうなのは、読書と、今日の出来事なのかも知れない。




暗いところで待ち合わせ (幻冬舎文庫)

暗いところで待ち合わせ (幻冬舎文庫)