親不知を抜いた事を親に知らせておく。

  半年以上前から虫歯があった。だって歯が削れてるんだもん、虫歯だよね。だらだらしてて痛みが増したので、重い腰を上げて歯医者に行った。

  歯医者なんて数年行ってなかった。もしかしたら他にも虫歯はあるのかもしれないけど、痛まないし放置してた。子どもの頃はそれなりに通ったもんだ。よく虫歯の治療は怖いとか痛いとか言われるけど、そんな事もあまり考えなかった。歯が削られる不快感はあるけど痛くはないし、歯医者の薬品の匂いだって好きだ。

  子どもはなんで虫歯になり易いのだろう。勿論虫歯は感染するので、子どもが出来る前にお母さんが治療しておくのは大前提だ。お母さんが治療しておけば、虫歯にならないもんなのだろうか。

  名前を呼ばれて、指定された椅子に座るや否や、先生が口内を観察して一言。

「うん、これは抜いた方が良いね。」

「！？」

をいをいをいをいこの藪医者ちゃんと見たんだろうな…。確かに結構食べられちゃってるけど、抜くってアンタ…。

「ここ親不知だし、治してもまた虫歯になるよ。なら抜いた方が良いよ。」と執拗に歯を抜きたがる先生。歯を抜くのが楽しみなんですか。

でもまた虫歯が出来るのは御免だし…でも抜くのが怖い。流石に抜くのは怖い。抜いた事ないし。勿論麻酔で痛くないとしても、ポコって抜けたり、神経的に離れたのが分かったりしたらもう気持ち悪くて…。あたしは抜くのが怖いと正直に伝えるも、抜いた方が良いよと先生。先生w

わかった！女は度胸だ！お前たち、援護しな！とドーラばりに度胸出して承諾した。先生はずっと抜くのを勧めてくるし仕方ない。2日は痛むかもと言われてビビる。

最初は麻酔を打った。麻酔を刺すのは若干ちくっとしたが我慢出来る。そういや、北斗晶が人生で経験した痛みランキングで、2位が出産だったよなぁと思い出していた。1位は首の骨折とかで、歯の痛みはランクインしてなかったし、多分大丈夫だろうと思った。否、願った。てか出産ってそんな痛いのかいっ。

  そういや、男性の方が痛みに強そうな感じはする、見た目。あと殴り合ってたりすると、アドレナリンが出てるからか痛くないとか聞く。でも彼氏はちょっとした怪我でも痛い痛い言うし、本当はやっぱり女の方が痛みに強く出来てるのかな。だって、男性のあの局部を打撃された痛みでさえ、出産には敵わないなんて噂がある位だし。でも内臓は痛いよねぇ。

  とりあえず麻酔を打って、歯をカチャカチャやられる感覚。もしかして漫画みたいにペンチ的なもので一気に抜かれるのかと恐怖していたが、違うようだ。しかし引っ張った位で歯が抜けるんだろーか。よく殴られて抜けるだとか折れるだとか言うから案外簡単に抜けちゃうモンなのかもしれない。多分先生は、あたしの親不知を引っ張って抜くのだろうが、ドキドキした。

  暫くして、抜けた、と先生は言った。ついで、ハサミで切る音は恐らく神経と歯を切ったのだと思う。ゾワっとしたけど、やはり麻酔のお陰で痛みはなかった。痛みはおろか、違和感すらも。麻酔を開発した奴はノーベル賞貰うべきだ。

  血が結構出るのとか、食べたものが空いてしまった穴に詰まったら嫌だなとか思っていた。先生が抜いた歯を見せてくれた。歯の裏面は黒く、ボロボロで、確かに抜いて正解だったかもしれない。うん、なかなかの名医だ。持って帰るか聞かれ、結構グロだし、話題にと思い、持って帰った。

  歯は結構溶けていて、穴も空いていた。結構大きな親不知だ。この親不知が抜けた後の空洞がちょっと怖い。先生は気さくなおばさんで、名医で、気楽に受診出来たし、感謝だ。面白かった。終わりですと言われて、立ち上がったら、全身汗だくな事に気づいた。やっぱり怖かったのねw

因みに今度は反対側の歯を先生に狙われている。