劣等感
劣等感。劣等感って言葉は、酷く親しみがある。あたしの人生のキーワードだった。
大学生の時、最初の彼氏にフられた。母は出来の良い弟を可愛がり、何も持たないあたしは必要ない存在だと思っていた。生きていても、勉強が出来るわけでも、容姿が良いわけでもなく、そして誰かから必要とされてるわけでもなかった。
家族からは必要とされてなかった。でも彼氏は必要としてくれていると思ってた。それも砕けて、あたしは本当に必要のない人間になってしまった。そこから病んで、自殺を考えた。
多分あたしの中に基準があって、それが弟だったんだと思う。あのレベルにならないと生きていてはいけない、生きてる価値はないと。
今の彼氏はずっと、何度も自己否定しているあたしを、何度も何度も無条件に肯定してくれた。
無償の愛だった。本当に存在するものなんだと思った。でもそれ自分に向けられている幸せな実感もなく、心はとうに冷え切っていた。たった二度の失敗で、愛なんてこの世にないと、確信していた。
あたしは、誰もが羨む環境にいた。だからあたしは、アームカットも辞めたし、死ぬのも辞めた。たくさん弱音を吐いて、たくさん慰めて貰い、愛してもらい、何度も失敗して、社会復帰出来た。
彼氏には感謝してもしても足りない。
乖離を疑われる程記憶力がない
そのせいかはわからないけど、消滅した劣等感や苦しかった時期をもう余り思い出せない。でも、あたしはここにいてはいけない人間なんだと、絶望した事は覚えてる。死ななくてはいけないと思った事も。
何一つ満足に出来ない人間だと、自分が自分を蔑んでいた。劣等感は、自分が受けた扱いから、自分の中で作られてしまうものだと思う。殆どの精神疾患も似てる。認知の歪みからだ。
劣等感に関する本をたくさん読んだ。最初は、自分を認めてやる、褒めてやる。冷静に、劣等感の原因を突き止める。劣等感を持っても仕方ない環境があったりする。何度も何度も否定しては、肯定してやろう、自分を。嘘だと思っても何度も。最初は嘘くさい、で良いと思う。
そして何度も失敗して、でも昨日よりは成長してやろう。1mmづつで良い。他の誰かと比べるのはやめよう。だって、最初から環境が違うのだから。昨日と比べよう。昨日より良くなれば良い。そうしてるうちに、少しずつ自分と向き合って、自分の良さもわかってくる。
たくさん肯定して、たくさん泣こう。嫌な事からたくさん逃げよう。そして力を蓄えたらまた向かい合おう。コツコツしか進めないけどそれで良い。あたしは、非適合者、落伍者だと思ってた。低学歴で、容姿が良くもなく、何か特技や夢があるわけでもなく、精神疾患もあって働ず。でも今あたしは、ブラック企業だけど、ちゃんと逃げずに毎日出勤して、お給料を貰えている。
何も出来なかったあたしが、成長したと今は思う。ハードルは低くても、それで良い。人は関係ない、過去の自分に勝てば良い。
あたしは子どもが嫌いだけど、いつか、あたしの子どもに出会いたいとずっとずっと楽しみにしてる。あたしがして欲しかった色々を、子どもにしてあげたい。
子どもには親しかいないから。子どもの世界の神様だから。あたしは絶対否定しないし、どんな事も肯定してあげるから。本当の家族をつくるのは、あたしの夢だ。
親を憎んだ。でも健全だ。親を憎む事は倫理に反するという風潮があるけど、健全だ。子育てした親は無条件で偉いという認識があるけど、それは違う。誤った子育てで、悲しい思いをした子ども、傷ついた子どもはこの世にたくさんいる。最早、子育てしたからといって、手放しに親を尊敬は出来ない。その影に多くの虐待も存在してる。
その背景は国やら政策にあって、子育てで疲弊して子どもに手をあげてしまう親もいるだろうとは思うけど、子どもにはそれがわからないし、ずっと苦しむ事になる。
でも親を憎んで良いんだ。反抗して良いんだ。別の人格なのだから。何かのせいにしないと、乗り切れない時もあるのだから。でも憎んで憎んで憎んだら、憎むのはもうやめよう。憎んだ先に未来なんてないし、自分の幸せだけ考えよう。
幸せになることが、最大の復讐だ。
あたしは親を憎んだ。酷い言葉を吐いた。そしてそれを訂正は出来ないし、しないけど、憎むのをやめた。だんだん、親も苦しかったのかなってわかるようになってきた。ケースバイケースではあるだろうけど。
たくさん心理学の本を読むともっともっと背景がわかるようにもなるし、許せるようにもなる。その時はその時で、呪縛から解放されたと思えば良い。誰よりも自由だと。
あんなに許せない、絶縁だと思っていた親と会話して、今は親の苦労もわかってしまう。過去の事を簡単には消せなくとも、もう見ないでいることは出来る。
最初の家族は与えられた家族。家族はやっぱり一度壊れた方が良い。そうしてやっと本当の家族になれるんだ。もしなれなかったとしたら、それはそれで良いと思う。今度は自分が素晴らしい家族を作るのだ。
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