しょうもない青春
夏は草の匂い。秋は金木犀。冬はわからない。春は
何かの花の匂いがする。何の花の匂いかはわからない。ちょっと青くて、洗って干した洗濯物みたいな爽やかな、そして甘い匂い。なんていう花だろう。
匂いは思い出を呼び起こす。
あたしの青春といえる時間は20代だけだった。友達のいない10代を、つまらない学生生活を飛び越えて。
その当時は出会い系が流行っていて、そこで会った男の子とよく遊んだ。過保護な親から逃げ出し、そこで少し楽になれた。
無価値な自分が体目当てとはいえ、必要とされた。歪んでいたかもしれないけど、そんな歪んだ事で生きていられたし、自分を保てたし、楽しかった。
最初の彼氏は車が好きな人で、車の色々な事を知った。いつもドライブデート。今でも夜ひたすら走った甲州街道とか、オレンジの街灯を思い出す。
2人目の彼は、ヤクザの下っ端だった。風俗店の店長。怖い顔だけど優しくて面白い人だった。男らしかった。パチ屋でデートして、夜中に彼の家の近くの定食屋でよくご飯を食べた。
なんで付き合っていたのだろう。
今の彼はとても優しい人。出会い系で出会ったのに、もう10年付き合っている。家も少し遠いのによく会ってくれて、メンヘラでめちゃくちゃなあたしを助けてくれた。そして今は2人で暮らしてる。
全員が出会い系なんてなければ出会う人でもなくて、殆どあたしと正反対の人で、そして彼らがいたから
あたしの人生も変わった。知らなかったたくさんを教わった。とても楽しかった。別れてしまってもあたしはそれをしっかり覚えているし感謝してる。あたしを構成してるものだから。
そして夜花の匂いをかぐと、はちきれそうなせつなさと一緒に彼らの事を思い出す。