廃園跡地

言いたい事を言いたいまま!

どうでもいいはなし

  彼女と余り会話をしなくなった。何か言われて、あたしは笑うようにしてるけど、顔が引きつってしまう。最近会社で出した求人に、応募者が来て面接をし、ファイルに挟まった履歴書を見て、彼女は嗤った。人の写真、経歴、学歴、名前、筆跡、資格、家族構成に至るまで、様々な破片をあげつらって小馬鹿にして笑う。

まだ入社もして来てない、会ったこともない人間を、何故馬鹿にして嘲笑う事が出来るのだろう。どんな人間かなんて、履歴書じゃ1ミリも分からないのに。この手の色眼鏡は反吐が出る。コイツは中卒とか、コイツは顔が、名前がダサいとか、笑える顔をしてるとか。その人がどんな人生を歩んだかなんて1ミリもわかりやしないのに。その人がどんな気持ちで面接を受けたかなんて1ミリもわかりやしないのに。大した学歴もない先輩が嘲笑う。お前はそんなすごい生き方してきたのかと問い詰めたくなる。同じ空間にいて、その下卑た笑い声を聞いていると気分が悪くなってくる。

 

  暫く先輩と会話をしてなかった。この前店長と先輩の話をした。いや店長から話を聞いた。彼女は周りが全て敵に見えると言った。しかし普段から人と揉める事を露ほども気にしない、寧ろ好戦的な人間が何を今更と思った。彼女は彼女で追い詰められていたらしいのだが。店長は彼女にも原因があるんじゃないかとハッキリ言った。彼女はそれもわかってると言ったらしい。今回仕事を辞めたくて、人を蹴落としてまで辞めようとした身勝手さや仕事をしていない事など、全てわかってると。彼女は彼女で、もう精神的にキツイから理解してくれ、助けてくれって事だったのかもしれない。なりふり構ってられないほどに。でも、追い詰められた時こそ人間の本性が出てくる。その本性を見たから、他にも彼女に対する批判の声が上がっている。自分が仕掛けた事なのに、自分から敵を作っておいて、敵に見えるなんて余りにも自分勝手でこの上なく先輩らしい。本人は少しづつ仕事をして、信用を取り戻したいらしい。だから珍しく、仕事をちゃんとしていたんだ。

 

  あたしは先輩の声を身近で聞きながら何1つ相談に乗ろうなんて思ってなかった。あたしが単なるイエスマンなのもあるかもしれないけど、あんなに批判して嫌っていた店長に相談するなんて。結局、彼女にハッキリ物を言ってくれたのは、嫌って批判していた店長しかいなかった。皮肉な事に。店長にはそういう所があるのに、彼女は馬鹿にして嫌って口撃していた。裸の王様は彼女だ。底抜けの意地悪さとワガママを併せ持ってる人間だからこそ、耳が痛くなる事を言う人間を側に置かなきゃならない。そんな人間こそ1番信頼出来るのだから。店長は何てことない風で、人に批判されてその時は激昂するけど、長続きはしない。すぐ忘れてしまうし、そもそも人に興味のない人間なのだ。単純と言えば単純だが、根に持たないタイプだから、店長は仕事が出来ないけど、あたしは嫌いになれない。

 

  先輩が今更何を思ってるかはわからない。敵と言った対象にあたしが含まれていたかどうかもわからない。あたしが快く思ってない事は辛うじてあたしの態度から推察したかもしれないけど。確かに生きてれば人間全て敵に思える時期もある。だけどそこから脱出するのは自分の力でしかない。物理的に周りが敵でない限りは。他人を変えるのは不可能だし、物の見方を変えるのは自分にしか出来ない。そういうフラットな気持ちで生きていかないと、疲れる。30過ぎてそんな事もわからんのか。そんな生き方疲れるし生き詰まるだけだ。先輩はそれを模索せず、自分が正しいと疑わず、人を批判して偽りの安堵を得ていたのかもしれない。自分がしてきた事のツケが回ってきただけなのに、全てを敵と言うのか。言いたい事を言いたいまま、ワガママしたい放題した人間が、辛いって言うんだろうか。もう辞めるし接点がなくなれば関係ない。だからあたしの心には何一つ感じる所がないのだろうか。あたしは冷たいだろうか。別に先輩をすごく嫌いなワケではないけど、店長との会話を聞いても、今更何か話す気にもならない。それはあたしも多分もう一杯一杯だからなんだろうと思う。