廃園跡地

言いたい事を言いたいまま!

忘れちゃいけないこと。

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  どうにもこうにも重い筆ならず、重い尻を上げて、綴ろうと思う。

  弟の結婚式は大成功だった。率直に言えば、素晴らしい結婚式で、結婚式とはこんなに素晴らしいものなんだと思った。単に2人の人徳の成せる技と、頑張りによるものだ。

  当日は大正の様なレトロな会場に、たくさんの人が集まった。仕事関係の方がいるとしても、友達もかなり居たと思う。結婚式で、弟が緊張の面持ちで入ってくるのを見て、全て悟った。何度も練習し、緊張し、そういう顔であった。確かに忙しくて、大変だと言ってたし、当人は結婚式を挙げながらも、自分達の式でないように思うらしい。お嫁さんは美しかった。元々美しい人だけど、後々写真を見返してもほぼどのショットでも笑顔で写っていたし、本当素晴らしい人を頂いたと思う。うちの弟は真面目だからきっと、彼女を泣かせることもないとは思う。

  結婚式は指輪交換も全てテレビドラマと同じだとボーッと眺めていた。ウエディングドレスはやっぱり美しい。何故か泣きそうになってしまった。色々複雑な気持ちが入り混じる。正直、あたしだって早く着たい。色んな女があの純白に憧れてるんだよなぁ…。やっぱりブーケトスには参加させられてしまった。出たくなかったのに。親戚のおばさんが余計な事言うから。余興だから良いけど、公開処刑ですわ。

  披露宴は本当言葉に尽くせぬほど素晴らしく、弟の頑張りが伝わってきた。席には1人1人へ手書きでメッセージが書かれていた。弟の綺麗な字。ここにきてやっと結婚式って本当は大変なんだと、理解した。食事は勿論、少しの間でも楽しませようという気持ちが伝わってきた。スピーチしてくれたのは、大学の先生で、やっぱり話し慣れてるので、講義の様に話を聞けた。友達はムービーを撮ってくれた。奇跡の確立、色んなものに挑戦して奇跡を見せつけるメンバーと、弟の大学の友達による再現VTRで結構面白かった。知らない弟の学生生活やプロポーズの瞬間を。結婚したいとは話したりしてて、2人で頑張っていければ、なんとかやれるなんてアドバイスしたけど、あれは女の意見だよなぁって今は思う。だって彼女を幸せに出来るのか?って男らしい悩みであればそんなのは答えられない。幸せってどんな形で。裏切らずずっとそばにいられるとしたら、それが答えなのかもしれないけど。結婚をしたこともないあたしが、弟の相談に適切な答えを出せるワケもない。

  食事も美味しく、披露宴は終わりに近づき、今まで色々ぶつかった父のスピーチになった。色んな事を経験した父は、スピーチなんて楽勝だとは思うし、やっぱりそれなりに良いことを言っていた。思い出に残ったフレーズは、「2人にはこれだけお願いしたい。親孝行しろよと。親孝行とは何か。こちらのご両親も同じことを思っていると思いますが、親孝行とは、2人が幸せになることです。」

  馬鹿たれです。感動してしまった。花嫁でなくて良かった。あたしはこの結婚式に心から感謝してる。あたしは何も手伝いもしなかった。当事者だけがやることで、こんなに手間がかかるとも予想していなかった。母は弟を支え、下の弟は贈り物をした。父だってスピーチをした。でもあたしは何もしてない。弟は来てくれただけで嬉しいと言ってくれたけど。あたしは家族の中ですら、何もしてないしはみ出している気がした。だからせめて、来てくれた人に感謝のつもりで、お菓子を焼いて行ったけど、渡せなかった。

  結婚式で嬉しかったのはあれだけ2人を慕う人たちが居たこと。あたしが知らなかったこと。てっきり同類かと思ってたのに。あたしの結婚式だったら、あんなに人は集まらなかったし、あんなに豪勢にもならないと思った。改めて2人の人徳だと思った。そしてそれが何より羨ましかった。自分の生き方は自分で決められるけど、人から愛されるかどうかはわからない。それもまた自分次第だけど、恵まれない人だっている。人の輪は。

  あたしは人と付き合う事を辞めた。上手く付き合っていけないからだ。上手くいかないからだ。傷つく位なら独りでいい。それを選んだ。依存的過ぎるから。だから良いし、そうする他はなかった。でも人と小まめに付き合い、相手の事を思いやって、優しい心があれば、人が溢れる。愛される。あたしには、そんな生真面目さも、誠実さも、優しさもなかった。自分の事で精一杯だった。

  今回結婚式の事で文句をたくさん言ったのは、恥知らずで非常識な事だったと思い知った。人の幸せを見せつけられて、金まで巻き上げられてって文句を言った。実に心の貧しい事だった。嫉妬していたのかもしれないし、お金がないことぐらいで、やっぱり余裕がなくなっていたのもあるだろう。お金がなくとも生きていける人もいるけれど、余裕がなくなってしまうのかもしれない。或いは不安。あたしは金になんか翻弄される人間じゃないと思ってきたけど、そうでなかった。今は彼氏と住んでるし、何れ家族になるのなら、自分が汚れてでも相手の為に生きていかないといけなくなる。生活ってのは綺麗事だけではやれない。そして、優しささえもあたしは失ってしまったのだと思う。

  人混みで人にぶつかられていくうちに、人への慈しみをあたしは失った。今の生活環境でも荒んだ人が周りに多いし、やっぱり生きるにはそういう階層が存在して、そこに身を落としてしまったら変わってしまうんだ。ネガティブな感情の方が強い。信じ抜く事は、強くなければ出来ない。もう弟の様な純粋な眼は出来ない。嫌な事を愚痴って、傷ついても、弟の様に実直に生きた方が良い。あたしは、子どもの頃、嫌だと思っていたキタナイ大人になってしまったと今は、思う。


  そんなことをたくさん考えた結婚式だった。ショックは大きいけど、これを忘れなければまだ、謙虚で人に優しく居られると思う。身内の結婚式で良かった。

  あんなに泣き虫だった弟は、大人になった。式をやり遂げた。でも親が子を何時迄も子どもと思うのと同じ様に、あたしより大人でも、実感わかないし、やっぱり可愛い弟のままだ。あたしより多くの体験をして、あたしより大人なのに。あたしは、大人になれない。嘘を吐けないのは良い性格かもしれないけど、柔軟性がない、忍耐がない。気分屋で、手を焼く。自分の子守りで精一杯だなんて。嫌な大人の事をキタナイ大人と言う。子どものままと言うのかもしれない。でもこの経験で生き方を変えることを選ぶのも自分だ。ショックはデカくとも、優しい気持ちになれたし、優しさを分けて貰えた様に思う。人の幸せで、こんな気持ちになれるなんて。

  帰りは家族で飲んでから帰った。幸せな時間だった。